日本改良めだか研究所の
今までとこれから
改良メダカのパイオニアとして、これまで数多くの優良品種を生み出し続けているのが日本改良めだか研究所です。
愛好家たちの間では「日め研(ひめけん)」の愛称で呼ばれ、長く親しまれてきました。

そんな日め研があるのは広島県福山市。JR福山駅から車で30分ほど走ったところにある、竹田川を近くに臨むのどかな場所です。
杜若園芸YouTuber鈴木が訪問すると、松浦智加さんと亮さんご夫婦が迎えてくれました。

敷地内に入ると大小さまざまな水槽がズラリ。日め研では100種類以上、10万匹のメダカを育てている。その多くが日め研オリジナル品種だ。
見渡す限りの水槽を松浦さんご夫婦が2人で管理している。

「メダカはゆっくり小さく育てた方がいいんです。子どものときは小さいバケツで過密に育てるのが基本ですね。早く育てると色がぼやけるんですよ。一気に膨れちゃうんで柄がキメ細かくならない。」

「逆に産卵できるようになるとなるべく大きな容器で元気に泳がせるとたくさん卵をつけますね。」
品質の良さに定評のある日め研ならではのこだわりだ。
訪れた11月はこれから冬に入る時期。ちょうど冬支度をして加温をスタートさせる準備中だ。
「もうね、必死です。メダカをきれいに育てるために必死で頑張ってます。」というお二人。

現在、広大な敷地で日め研を営む松浦さんたちですが、その始まりは意外にも小さな一歩だったそう。
「最初は、私が前の職場でもらったミックスメダカ10匹を父に誕生日プレゼントで渡したことから始まったんです。」と語る智加さん。
「かつては生業としてではなく、副業や趣味の範囲で改良を楽しんで、少しずつヤフオクに出品するような感じだったんです。それが気づけば20年近くもメダカに関わる生活をしてますね。」
「僕は、引っ越してきたころは別の仕事をしてたんです。でもこれだけ広大な敷地になるんで手伝わないけんってなって、土日に手伝うようになったんです。手伝ううちにメダカの魅力にどんどん引き込まれていきましたね。」

そんな亮さんは、品評会で1位を獲得するほど改良の世界でも知られる存在に。
「義理の父が『改良せえ、改良せんとメダカ屋じゃない』というのが最初の指導だったんです。 自分自身も引き継いでやっていく中で、改良をしっかりとやっていかんといけんという思いが強いです。楽しいし。」
改良中のメダカを見せてもらうと、なんとも言えない茶色いメダカたち・・・

「この茶色がたぶん赤くなるかなと。一見何にもならなさそうな茶色いメダカなんですけど鰭が白かったりシッポが黄色かったりっていうのがポイントなんです。
「F1(第一世代)の段階で茶色のメダカが生まれてそれを普通の人は捨てるんですけど、 僕らはその中であ、ちょっとおもしろい特徴、茶色いんだけどヒレに黄がはいってるとか 次に取ったらきれいになるなっていうのをみて 累代してみて赤がばっちりきれいにのってるメダカがでたり。」
小さな特徴を発見する目が大切なんですね。そこから狙った形を出すというのはなんと、難しい世界なんでしょう・・・
「でもこれが狙ったのが出たときはめっちゃ楽しいですよ。だがら茶色いメダカ好きです。前兆なんで。」と笑う亮さん。
色の組み合わせや作りたい個体はどうやって思い浮かぶんですか?
「パンって思い浮かびますね。それをまたメモるんですよ。 没頭すると寝ててもあれいいな、これいいなってなっててなるんです。」
そう言ってスマートフォンのメモを見せてくれた。

そこには実験中の掛け合わせがびっしり。 管理するだけでも大変な作業だが、それをいくつも同時進行しているというのが驚き。
作曲家やアーティストのようなクリエイティブな世界なんですね。
「ほんとそうですよ。新しいものを出す人たちはそういう感性がいりますね。 一方で掛け合わせできれいに作るための続け方やそれを増やす作業を総合的にやらないといけない。 思うように表現できてもそこから量産していくテクニックが必要なんですね。」
愛好家としてではなく、メダカ屋として改良品質や固定率を総合的に効率良く成り立たせることが難しくも面白いところだという。
日々の仕事の中で大切にしている一つが水替え作業。
水の色にも気を配り、茶水になるとメダカが死んだり病気がちになるため定期的な水替えは欠かせない。

「傷み方や臭いが五感で分かるような経験やスキルが大事になってくるんです。」
「水替えのタイミングを計れるようになってきたら一人前みたいなところがありますね。 夏場はエサを食べますし、水の傷みも早いんで一週間に1~2回はしてあげた方がいいです。 逆に冬になるとメダカの動きも鈍くなって冬眠していくので 太陽がしっかりでて気温が高い日に水替えしてあげるっていうのが大事です。 メダカも弱ってるんで逆にタモでメダカを傷つけてそこから病気が広がらないように気をつけてもらった方がいいですね。」
大事とはいえ一番の重労働で大変なんです。と苦笑いしながらも水槽はピカピカに。
選別を担当するのは智加さん。出荷する個体を厳選し、メダカの状態を見極める重要な役割を担っている。
「夏は暑いですし、冬は寒いですしねぇ。でもメダカちゃんたちが可愛いので頑張れます。」という智加さん。

取材中も終始笑顔で朗らかな人柄が溢れていました。
そんな智加さんの気配りが光るのが梱包。ビニールでパッキングした後の輪ゴムの掛け方に一工夫。 ハサミで切れば簡単に解けるのにゆるみや手の力では決して外れない輪ゴムの止め方一つに手間を惜しまない。

他にも配送地域の気温を考慮して保冷・保温材の量を調整し、発泡容器の養生テープの剥がしやすさにまで気を配る。さりげない気遣いがなんとも嬉しい。
一品種に大変な時間と労力がかかる改良メダカ。 取材を通して一匹一匹の品種の重みを感じることができました。 それだけの年月と思いがあるんだなと。
より良いメダカを作り続けることを使命とし、先代から受け継いだ考え方を大切にしながらも新しいやり方を取り入れ、これからも進化していきます。